プロンプトの長さより情報の選び方|検証2件で解説

プロンプトは長さではなく情報の選び方が結果を決めることを表したイラスト

※本記事にはアフィリエイト広告(PR)が含まれます。

「もっと細かく書けば、もっといい答えが返ってくるはず」

AIに仕事を頼むとき、そう思って指示文を足していったことはないでしょうか。役割を与え、前提を並べ、注意点を書き、出力形式を指定する。気づけば、依頼のたびに20行の前置きをコピペしている。

先に結論を書きます。答えの質を決めているのは長さではありません。何を入れて、何を入れないかです。2026年8月19日に日本語メディアで広まった2件の検証データを元記事まで読むと、「長く書けば賢くなる」も「短く書けば節約できる」も、そのままでは成り立たないことが分かります。

私は非エンジニアの会社員です。ChatGPT PlusとClaudeの有料プラン、Google AI Pro、Perplexityの有料プランを契約しています。この記事の削り方は、その環境でそのまま試せる形にしました。扱う検証データと各社の推奨は、2026年8月20日に元の公開ページを開いて中身を確かめています。

読み終わる頃には、指示文に足すと効く情報足しても効かない情報の線引きが手元に残ります。毎回の入力は短くなり、それでいて返ってくる答えの質は落ちない。長い前置きテンプレを使い回している人ほど、削れる量は大きいはずです。

この記事でわかること
  • 「短く話せばトークン65%節約」の実測値が8.5%だった理由
  • 「細かく書くほど賢くなる」が検証で支持されなかった中身
  • 2件の検証が当てはまる範囲と、当てはまらない範囲
  • 足すと効く情報4種類/足しても効かない情報4種類の対比表
  • メール下書き・議事録要約・資料整理での具体的な削り方
  • AnthropicとGoogleの公式ガイドが推奨する書き方(2026年8月20日時点)
目次

プロンプトの長さは、目的ではなく結果です

最初に線引きをしておきます。指示文を長くすること自体には、答えを良くする力も悪くする力もありません。効いているのは、その長さの中にAIが判断に使える情報がどれだけ入っているかです。

同じ300字でも、あなたの部署の事情と提出先と締切が書かれた300字と、「あなたは一流のコンサルタントです」「正確かつ分かりやすく」で埋まった300字では、返ってくる答えが変わります。前者は判断材料で、後者は飾りだからです。

だから指示文を見直すときの物差しは、文字数ではありません。1行ずつ「この行がなかったら、答えは変わるか」と聞ける形になっているかどうかです。試しに、いつも使っている前置きを1行ずつ判定してみてください。

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指示文の1行消したら答えは変わるか扱い
提出先は取引先の購買部長です変わる残す
あなたは一流のビジネスライターですほとんど変わらない削る候補
300字以内、箇条書き3本で変わる残す
丁寧に、正確にお願いします変わらない削る候補
先週の会議で価格改定は保留と決まりました変わる残す

この判定を全行に通すと、たいていの前置きテンプレは半分以下になります。減った分だけ入力が速くなり、答えは変わらない。ここから先は、なぜそう言えるのかを公開された検証データで確かめていきます。

「短く話せば65%節約」の元記事を読むと、話がかなり違います

2026年8月19日、AIエージェントに原始人のような短い言葉で話しかけるとトークンを大幅に節約できる、という話題が日本語メディアに載りました(@IT)。SNSでも「今日から指示文を短くする」という反応が並びました。

ただ、元になっている検証記事を開くと、印象がだいぶ変わります。書いたのは開発ツール大手のJetBrainsで、「Caveman(原始人)」というスキルを実際に走らせて、宣伝どおりトークンが減るのかを自分たちで測った記事です。

Cavemanが何をするスキルなのかは、記事中の一文がそのまま表しています。「Skill make agent talk like caveman. Why use many token when few do trick.(このスキル、エージェントを原始人みたいに喋らせる。少ないトークンで済むのに、なぜ多く使う)」。冠詞も助動詞も落とした電報のような文体にさせる、という中身です。

そして測った結果が、これです。

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計測の段階規模トークン削減率
スキルの宣伝値-65%
最初のお試しラン10タスク(1回ずつ)-29.5%
中規模ラン10タスク(3回ずつ)-6.7%
本番の計測86タスク-8.5%(出力トークン 592k→542k)
トークン削減率の比較。宣伝値65%に対し86タスクの本番計測は8.5%
規模を広げるほど、宣伝値との差が開いていきました。

宣伝値の65%に対して、実測は8.5%。しかも面白いのは、規模を広げるほど数字が下がっていったことです。最初の10タスクでは約30%減っていた効果が、サンプルを増やすと溶けていった。JetBrains自身が「Never trust a k=1 eval(1回だけの評価を信用してはいけない)」と書いています。

検証の条件も具体的です。対象はClaude Code 2.1.200を画面なしで動かしたもので、モデルはClaude Sonnet 5、推論の強さは低い設定。試行はおよそ240回、かかった費用は約106ドルと明かされています。

ここで気になるのは、短くさせて品質は落ちなかったのかという点ではないでしょうか。82ペアを突き合わせた結果は次のとおりです。

品質はどうだったか(82ペアの比較)
  • 同点だったペア:64
  • 短くしたほうが上回ったペア:8
  • 短くしたほうが下回ったペア:10
  • 符号検定のp値:0.82(差があるとは言えない)
  • 平均スコア差:-0.015(0〜1のスケール)

つまり「短くさせても答えは悪くならなかった」。ここは押さえておく価値があります。短い指示=手抜き、という思い込みは、少なくともこの規模の検証では支持されませんでした。

では、なぜ宣伝の65%と実測の8.5%がこれほど離れたのか。JetBrainsの説明はこうです。65%はチャット形式の受け答えで出た数字で、開発ツールの出力は事情が違う。コード、差分、ツールの呼び出し、エラー文字列がトークンの大半を占めていて、Cavemanはそこには手を付けません。短くなるのはツール呼び出しの合間の説明文だけで、その分量がもともと多くない、という理屈です。

記事の結論も歯切れがいい。「Safe, honest about style, oversold on savings(安全で、文体については正直だが、節約については売り込みすぎ)」。そのうえで「気に入ったなら使えばいい。楽しいし、品質面で測れるほどの代償はない」と書き、日常のエージェント作業で期待できる節約は1桁台後半が現実的な上限だとしています。コスト削減を目的に導入するものではない、というのが検証した本人の立場です。

この検証が測っていないこと
  • 測ったのは出力トークン(AIが書く側)で、あなたが打ち込む入力の長さではありません
  • 対象は開発ツールを自動で走らせる使い方で、チャット画面での質問と回答ではありません
  • スキルを強制的に起動させた条件での数字です。使うかどうかをAIの判断に任せる通常の使い方では、節約幅はこれ以下になるとJetBrainsは注記しています

検証の全文はJetBrains公式ブログの該当記事で読めます(英語・2026年8月20日確認)。数字の出し方まで公開されているので、AIの検証記事の読み方の見本としても参考になります。

「細かく書くほど賢くなる」も、検証では支持されていません

反対側の思い込みについても、同じ日に材料が出ています。IBM Researchが公開した検証で、こちらはGIGAZINEが「AIエージェントは『記憶』が多いほど賢くなるとは限らない」として取り上げました。

検証の舞台はAppWorldという環境です。カレンダー、メッセージ、支払いなど9つの模擬アプリをAIに操作させて、タスクをやり遂げられるかを見ます。タスク数は585(通常168・難問417)、対象は8モデル。そこで、AIに渡す「過去の手がかり」の量を3段階に変えて比べました。

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条件渡し方gpt-oss-120b の成績トークンの増え方
記憶なし手がかりを何も渡さない39.9%ー(基準)
全部渡す集めた手がかりを毎回すべて渡す51%増
選んで渡す中核+そのタスクに関係するものだけ56.0%5%増

gpt-oss-120bというモデルでは、手がかりを選んで渡すと成功率が39.9%から56.0%へ、16.1ポイント伸びました。しかも増えたトークンは約5%。全部渡す条件では約51%も増えているので、少ない追加で大きく伸びたことになります。

情報は多いほどいい、という感覚とは逆の結果です。渡す量を増やせば増やすほど、AIはそのタスクに関係のない手がかりまで抱え込む。その中から本当に必要な1本を選び直す作業が、そのまま負荷になります。

ここは正確に読む必要があります

「選んで渡すほうが常に良い」という結果ではありません。DeepSeek-V3.2、Claude Opus 4.6、GPT-5.5では、手がかりを全部渡したほうが成績が良く出ています。IBM Researchの結論は「適量はモデルによって違う」で、しかもモデルの大きさからは予測できない、とされています。

つまり「全部渡す」も「選んで渡す」も、それ自体が正解ではない。効いていたのは、渡す量ではなくそのタスクとの関係の濃さでした。ここが、この記事でいちばん持ち帰ってほしい部分です。

ちなみに、適量がモデルごとに違うということは、使っているAIの癖を知っておく価値があるということでもあります。同じ依頼でも返し方が変わるので、乗り換えや使い分けを考えている方はClaudeとChatGPTの違いも合わせて見ておくと判断が早くなります。

検証の詳細はIBM Researchの公開記事にあります(英語・2026年8月20日確認)。

2件の検証には、そのまま真似できない条件がついています

ここまでの数字を、そのまま「だから指示文は短くていい」と読むのは早すぎます。2件とも、対象にしているのはAIエージェントだからです。

エージェントというのは、依頼を1回受けたあと、AIが自分で手順を分け、ファイルを読んだりアプリを操作したりを何十回も繰り返す使い方のことです。ChatGPTやGeminiの画面に質問を打ち込んで、答えが1回返ってくる。あなたが普段やっているのは、たぶんこちらでしょう。条件がかなり違います。

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比べる点検証が対象にした使い方会社員の普段の使い方
やり取りの回数1つの依頼で何十回も自動で往復1〜数回。人が読んで打ち返す
トークンの中身コード・差分・ツール呼び出しが大半日本語の文章がほぼすべて
測っていた対象AIが出す側のトークン量とタスク成功率読んでそのまま使えるかどうか
失敗したときの影響気づかないまま次の手順に積み上がるその場で気づいて言い直せる

ですから「8.5%しか減らないなら短くする意味がない」とも、「選んで渡せば16ポイント伸びる」とも、日本語のチャットにそのまま言い換えることはできません。この点をぼかして一般化している解説を見かけますが、元記事にはどちらも書かれていない話です。

そのうえで、条件が違っても持ち帰れるものが2つあります。

条件が違っても持ち帰れる2点
  • 短くしても品質は落ちなかったという結果が、82ペアという規模で確認されている。「短い=雑」という思い込みを外していい
  • 情報を足すことには増えるコストがある。全部渡すより、関係するものを選んで渡すほうが効率がいい場面が確実にある

この2つは、開発ツールでも日本語のチャットでも共通する話です。あとは、自分の仕事でどこを削ってどこを残すかを決めるだけになります。

足すと効く情報は4種類、足しても効かない情報も4種類です

では、自分の指示文のどこを残せばいいのでしょうか。会社員の実務に落とすと、入れる情報はきれいに二つに分かれます。判断材料になるものと、ならないもの。下の表が、この記事のいちばん実用的な部分です。

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足すと効く情報なぜ効くのか足しても効かない情報なぜ効かないのか
①判断の基準
(何を優先するか・何を避けるか)
迷ったときの分かれ道をAIが自分で決められる①役割の飾り
(「あなたは一流の〜」)
形容を足しても、判断材料は1つも増えない
②読み手と提出先
(誰が読むか・社内か社外か)
敬語の強さと専門用語の量が自動で決まる②お願いの言葉
(「よろしくお願いします」)
出力の内容を左右しない
③形式と分量
(何字・何本・どの順で)
整え直しの往復が減る。効果が最も分かりやすい③一般論のお作法
(「正確に」「分かりやすく」)
その行を消しても答えはほとんど変わらない。次の「削るテスト」でそのまま確かめられます
④手元にしかない事実
(固有名詞・数字・決定事項)
AIが持っていない情報。ここが答えの質を最も大きく変える④前置きテンプレの固定部分
(案件が変わっても変わらない行)
案件ごとの違いを表さない=判断に使えない
その行を消して答えが変わるかで残すか削るかを判定するフローチャート
分類を覚えるより、この1問で判定するほうが速いです。

4つずつ並べましたが、覚え方はもっと単純です。その行を消したら答えが変わるなら残す。変わらないなら削る。効く4種類は消すと答えが変わり、効かない4種類は消しても変わりません。

いちばん効くのは「手元にしかない事実」です

4種類のうち優先順位をつけるなら、④が頭ひとつ抜けています。AIは一般的な知識をたっぷり持っていますが、あなたの会社で先週何が決まったかは知りません。そこを埋める1行の情報量は、「正確に書いてください」の10行分より大きくなります。

IBM Researchの検証で成績を伸ばしたのも、この種類の情報でした。渡したのは大量の一般的な手がかりではなく、そのタスクに関係する少数の手がかりです。日本語の実務に置き換えるなら、「その案件に固有の事実だけを選んで書く」ということになります。

前置きテンプレは、5分の作業で半分にできます

手順にすると、こうなります。今日そのまま試せる内容です。

STEP
いま使っている前置きを、そのまま貼り出す

メモ帳でもWordでも構いません。毎回コピペしている文をひとかたまりで見える状態にします。頭の中で覚えている人は、一度書き出してください。

STEP
1行ずつ「消したら答えは変わるか」を聞く

変わると即答できない行に印を付けます。役割の飾り、お願いの言葉、一般論のお作法は、ほぼここに集まります。

STEP
印のない行だけを残して、同じ依頼を出す

長い版と短い版で、同じ案件を1回ずつ投げます。比べるのは仕上がりだけ。所要時間は数分です。

STEP
差が分からなければ、短いほうを新しいテンプレにする

差が出た場合は、削った行を1つずつ戻して原因を特定します。たいていは「形式と分量」か「手元にしかない事実」を巻き込んで消しています。

STEP
残った行を、場面ごとに分けて保存する

メール用、議事録用、資料整理用。全部入りの1本を使い回すより、短い3本を持つほうが結果的に速くなります。

メール・議事録・資料整理の3場面で、実際に削ってみます

とはいえ、自分の依頼文だとどこが飾りなのか分かりにくいですよね。会社員の定番3場面で、削る前と後を並べます。落としたのは「効かない4種類」だけです。

場面1:取引先へのお詫びメール

削る前(例):「あなたは日本のビジネス文書に精通した一流のライターです。以下の条件をよく読み、正確かつ丁寧に、失礼のない自然な日本語で文章を作成してください。読みやすさにも配慮してください。よろしくお願いします。取引先に納期遅れをお詫びするメールを書いてください。」

削った後:「取引先の購買部長あてに、納期が3日遅れることを伝えるメールを書いてください。原因は当社の部材手配漏れです。代わりの納品日は9月2日。300字以内、言い訳を並べず、最初に謝罪と新しい納期を書いてください。」

消えたのは役割、お願い、一般論のお作法。残ったのは相手・事実・原因・代案・分量・書き出しの順番です。文字数はほぼ半分になりましたが、AIが判断に使える材料は増えています。

場面2:会議の文字起こしを要約する

削る前(例):「あなたは優秀な議事録作成のプロフェッショナルです。以下の会議内容を、正確に、漏れなく、分かりやすく要約してください。重要な点を見落とさないよう注意してください。」

削った後:「次の文字起こしを、参加していない課長に見せる前提で要約してください。『決まったこと』『持ち帰り(担当者と期限つき)』『保留』の3見出しに分け、各3行以内。金額と日付は原文のまま残してください。」

「漏れなく」「見落とさないよう」は、指示としては何も決めていません。代わりに見出しの型と読み手を書くと、どこを残しどこを捨てるかがその場で決まります。

場面3:たまった資料を整理する

削る前(例):「あなたは経験豊富なビジネスアナリストです。以下の資料群を、プロフェッショナルな観点から、体系的かつ網羅的に整理・分類してください。」

削った後:「次の12本の資料を、来週の社内説明で使う順に並べ替えてください。判断の基準は『初めて聞く人が理解できる順』です。並べたあと、抜けている資料があれば1行で指摘してください。」

「体系的」「網羅的」は聞こえがいいのですが、並べ替えの軸を決めていません。軸を1つ書くだけで、結果が使えるものに変わります。

3場面に共通していた削り方
  • 「あなたは〜のプロです」の1行を丸ごと落とす
  • 「正確に」「分かりやすく」「網羅的に」を、具体的な軸1つに置き換える
  • 読み手を1人に決めて書く(課長・購買部長・初めて聞く人)
  • 字数・本数・見出しの型を数字で指定する

ここで誤解のないように書いておくと、テンプレそのものを否定しているわけではありません。使い回してよいのは形式と手順を指定する部分で、削る対象は役割の飾りと一般論のお作法です。むしろ、場面ごとに型を持っておくほうが毎回の入力は短く済みます。

議事録の要約は依頼の形が決まりやすいので、型が効く代表例です。ゼロから考えるのが面倒なら、ChatGPT議事録要約プロンプト例|コピペ用9本から近いものを1本選び、そこに自分の案件の事実だけを足す使い方をおすすめします。長さで悩む必要がなくなります。

各社の公式ガイドも「簡潔に、ただし具体的に」と書いています

検証データだけでは心もとないので、AIを作っている側の推奨も見ておきます。2社の公式ドキュメントを2026年8月20日に開いて確認しました。

Anthropic(Claudeの開発元)は、プロンプトの原則として「Golden rule」を置いています。「前提をほとんど知らない同僚にプロンプトを見せて、そのとおりに動いてもらう。相手が混乱するなら、Claudeも混乱する」。そのうえで挙げているのは、出力の形式と制約を具体的にすること、順序が大事なときは番号付きの手順で書くことです。長く書け、とはどこにも書かれていません。

Googleは、効果的なプロンプトの4要素をペルソナ・タスク・背景情報・形式と整理しています。コツとして挙がっているのは「自然な表現を使う」「具体的かつ反復的に」、そして「簡潔に記述して、複雑にならないようにする」「指示は簡潔に、ただし具体的な内容にします」。簡潔さと具体性を、両立させるものとして並べているのが特徴です。

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公式ガイド言っていること言っていないこと
Anthropic前提を知らない同僚が迷わない具体さ/形式と制約の明示/順序が要るなら番号付き推奨の文字数
Googleペルソナ・タスク・背景情報・形式の4要素/簡潔に、ただし具体的に/うまくいかなければ追加のやり取りで調整推奨の文字数

どちらも「読む人が迷わない具体さを持たせなさい」と言っていて、長さはその結果として決まる、という順番になっています。冒頭に書いた「長さは目的ではなく結果」は、こことも一致します。

原文はAnthropicの公式ドキュメントGoogleの公式ガイドで読めます。※2026年8月20日時点の公式サイト情報です。

「短くする」を目的にすると、かえって遠回りになります

最後に、ブレーキも書いておきます。JetBrainsの検証が示したのは「短くしても品質はほぼ同等」であって、「短くすると良くなる」ではありません。平均スコア差は-0.015で、統計的に差があるとは言えない範囲ですが、上振れしてもいないのです。

削ることそのものをゴールにすると、判断材料まで巻き込んで消してしまいます。そうなると出し直しが1回増える。短くして5秒稼いで、やり直しに3分かける。それでは本末転倒ではないでしょうか。

短くするときに削ってはいけない4つ
  • 固有名詞(社名・製品名・部署名・担当者の役職)
  • 数字(金額・日付・件数・期限)
  • 決まっていること/まだ決まっていないことの区別
  • 出力の形式と分量(字数・本数・見出しの型)

もうひとつ。短い指示で出てきた文章を読んで「なんだかAIっぽいな」と感じたなら、それは長さの問題ではなく仕上げの問題です。直し方はAIっぽい文章の直し方|報告書のAI感を消す7点にまとめてあるので、提出前の5分に使ってみてください。

よくある質問

結局、プロンプトは何字くらいが適切ですか。

字数の正解はありません。AnthropicもGoogleも、公式ガイドで推奨の文字数を示していません(2026年8月20日時点)。目安を作りたい場合は、字数ではなく「1行ずつ削るテスト」を通したあとに残った行の合計が、そのときのあなたにとっての適切な長さになります。案件が複雑なら長くなりますし、単純なら2行で終わります。

「あなたは一流の〇〇です」という役割指定は、まったく無意味ですか。

無意味と言い切れる根拠はありません。Googleの公式ガイドはペルソナを4要素の1つに挙げていて、否定はしていません。ただ、「一流の」のような形容は判断材料を増やさないので、書くなら「経理担当者が読む前提で」のように読み手や立場を書くほうが、指示として具体的になります。役割を書くこと自体ではなく、飾りで終わらせることが問題という整理です。

長い前置きテンプレをコピペしています。全部やめるべきですか。

やめる必要はありません。削る対象は、案件が変わっても中身が変わらない行のうち、答えを左右しないものだけです。形式・分量・手順を指定する行は毎回書く手間を省いてくれるので、残すほうが得になります。全部入りの1本を使い回すより、場面ごとに短い型を持つほうが実務では速いです。

指示文を短くすると、AIの利用料は安くなりますか。

個人向けの月額プラン(ChatGPT PlusやClaudeの有料プランなど)は定額なので、短くしても請求額は変わりません。従量課金のAPIを使っている場合はトークン量が料金に直結しますが、JetBrainsの検証で減ったのは出力側で、削減幅は86タスクで8.5%でした。料金の節約を主目的にすると、期待とずれやすいところです。短くする理由は、あなたの入力時間の節約と考えるほうが実態に合います。

どのAIでも、同じように短くしていいですか。

IBM Researchの検証では、渡す情報の適量はモデルによって違い、モデルの大きさからも予測できないという結果が出ています。ですから一律に決めず、使っているAIで同じ依頼を長短2通り出して見比べるのが確実です。1回試せば、自分の使い方での傾向はつかめます。複数のAIを併用している方は、ツールごとに型を分けておくと迷いません。

検証はAIエージェント向けとのことですが、普通のチャットにも当てはまりますか。

そのまま当てはめることはできません。2件とも、AIが自分で何十回も手順を進める使い方を対象にした検証です。ただし「短くしても品質は落ちなかった」「関係する情報を選んで渡すほうが効率がいい場面がある」という2点は、考え方として日本語のチャットにも応用できます。数字をそのまま持ち込むのではなく、判断の物差しとして使ってください。

まとめ:削るのは長さではなく、関係のない情報です

ここまでの内容を、持ち帰り用に並べておきます。

この記事のまとめ
  • 「短く話せば65%節約」は宣伝値。86タスクの実測は8.5%で、対象は開発ツールの出力トークン
  • 品質は82ペアで統計的な差なし(p=0.82)。短い=雑ではない
  • 「全部渡す」より「選んで渡す」が伸びるモデルがある(gpt-oss-120bは39.9%→56.0%・追加トークンは約5%増)
  • ただし適量はモデルによって違い、2件ともAIエージェントを対象にした検証
  • 足すと効くのは、判断の基準/読み手と提出先/形式と分量/手元にしかない事実
  • 効かないのは、役割の飾り/お願いの言葉/一般論のお作法/前置きテンプレの固定部分
  • 公式ガイドの推奨は「簡潔に、ただし具体的に」。推奨字数はどちらも示していない(2026年8月20日時点)

今日いちばん効くのは、次に何かを頼むときに前置きを1行だけ消してみることです。答えが変わらなければ、その1行は明日から要りません。それを5回くり返せば、テンプレは自然に半分になります。

そのうえで、削っても答えが良くならないと感じるなら、原因は指示文ではなく道具のほうかもしれません。同じ依頼でも返し方はAIごとに違います。用途別の比較から選び直すのが、いちばん早い立て直し方です。

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この記事を書いた人

AIツールは「使えるかどうか」より「自分の仕事で役に立つかどうか」。

30〜40代の非エンジニア会社員です。プログラミングは書けませんが、
ChatGPT・Gemini・Claude などを毎日の業務と副業で実際に使い倒しています。

「種類が多すぎて選べない」「課金する価値があるのか分からない」
「導入したいけど社内をどう説得すればいいのか」――
そんなつまずきを、専門用語をできるだけ使わずに解説します。

料金や機能の横並び比較、初期設定の手順、そのまま使えるプロンプト、
そして副業や業務効率化で実際に成果が出た使い方まで、
自分で試して確かめたことだけを書いています。

このブログが、あなたの仕事を少し軽くするきっかけになれば嬉しいです。

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