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先に身も蓋もない話をします。会社が契約したAIに打ち込んだ文章は、あなたが想像しているより長く、あなた以外の人が取り出せる場所に残ります。
つい個人的な悩みを相談してしまった。転職活動の文面を下書きさせてしまった。数日たってから不安になって履歴を消した。そんな覚えのある人は、少なくないはずです。
ただし「全部筒抜け」でもありません。答えはサービスごとにはっきり違います。ChatGPT Businessは、既定では管理者がメンバーの非公開チャットを一覧できません。いっぽうMicrosoft 365 Copilotは、プロンプトと応答があなたのメールボックスに保存され、法務調査用の道具で検索・エクスポートできます。
そのMicrosoftの監査ログは、既定で180日残ります。半年前の火曜日に打ち込んだ一文が、いまも検索の射程に入っている計算です。
この記事は、2026年8月30日にOpenAI・Microsoft・Googleの公式ヘルプと管理者向けドキュメントを読み、そこに書いてある記述だけで組み立てました。読み終わる頃には、自社のAIについて「見えるもの・見えないもの・条件つきで見えるもの」が1枚の表で分かり、明日から何を入力しないかが決まっている状態になります。
- ChatGPT Business・Microsoft 365 Copilot・Gemini for Workspaceで、管理者に見える範囲がどう違うか
- 「管理画面から会話を開けるか」と「会話を取り出す仕組みがあるか」は別の話だということ
- 監査ログに残るのは中身なのか、使った事実だけなのか
- 消した会話がいつまで残るか(30日・180日・1年の使い分け)
- 自分の会社がどれに当たるかを確かめる手順と、社内で聞くべき質問文
- 明日から使える「入力してよいもの・避けたほうがよいもの」の線引き
- 私が個人で契約しているのはChatGPT Plus・Google AI Pro・Microsoft 365 Personalなどの個人向けプランです
- 私はChatGPT Business・Microsoft 365 Copilot・Gemini for Workspaceのいずれも契約しておらず、管理画面を開いた経験はありません。だから「管理者側で見てみた話」は書けません
- この記事で「公式に書かれている/書かれていない」と述べる範囲は、2026年8月30日に読んだ次のページに限られます:OpenAIヘルプセンター(ChatGPT Business一般FAQ、データ共有とプライバシーの管理、管理対象ChatGPTアカウントのデータアクセス、チャットおよびファイルの保持ポリシー、Compliance Platform)/Microsoft Learn(Purviewによる Microsoft 365 Copilot の管理、Copilot および AI アプリケーションの監査ログ、Purview監査ソリューション)/Google Workspaceヘルプ(生成AIプライバシーハブ、Vaultの対応サービスとデータタイプ、Vaultの保持の仕組み、Gemini for Workspaceのログイベント)
- 各社とも自社の管理者向け機能を「できること」の側から書いています。この記事はそれを、管理される側の言葉に置き換えたものです
「見られる」は3つの層に分かれています
この話がこじれる理由ははっきりしています。読む人と書く人で「見られる」の意味が食い違っているからです。
整理すると、心配のタネは3つの層に分かれます。層が違えば、確認すべき相手も対策も変わります。
- 第1層:AIサービス自体/管理者権限・監査ログ・データの保持。この記事の主題はここです
- 第2層:会社のパソコンとネットワーク/資産管理ソフト、通信を中継する仕組み。AIの契約とは無関係に動きます
- 第3層:共有と画面/自分で作った共有リンク、画面を覗かれる、会議で投影する。いちばん地味で、いちばん頻度が高い層です

検索でよく見かける解説は、第2層の話に寄りがちです。「社内ネットワークのログに残る」という説明は正しいのですが、それだけでは第1層の答えになりません。
そこで本題です。会社が契約するAIサービスそのものは、管理者に何を見せているのでしょうか。
3サービスを横に並べた早見表
先に全体像を出します。この表がこの記事の核です。スマホの方は横にスクロールしてご覧ください。
| 確認したい項目 | ChatGPT Business | Microsoft 365 Copilot | Gemini for Workspace |
|---|---|---|---|
| 管理画面からメンバーの会話を一覧できるか | 既定ではできない | 一覧する画面はない(ただし下の行を参照) | 一覧する画面はない(ただし下の行を参照) |
| 会話の中身を取り出す公式の仕組み | ワークスペースのデータエクスポート機能はなし。会話メッセージを取り出すCompliance PlatformはEnterprise・Edu向け | あり。プロンプトと応答は本人のメールボックスに保存され、電子情報開示(eDiscovery)で検索・エクスポートできる | あり。Vaultで、ユーザーが入力したプロンプトとGeminiアプリの応答を検索・エクスポートできる |
| 監査ログに残るもの | 利用状況や支出などの運用指標。公式ヘルプはこれを「チャット履歴へのアクセスとは別個」と説明 | 誰が・いつ・どのアプリで使い、どのファイルを参照したか。参照先のファイル名・URL・秘密度ラベルまで残る | 使った機能の種類(会話・生成・要約など)とアプリ名。プロンプトの本文は含まれない |
| 入力内容がモデルの学習に使われるか | 使われない(学習から除外) | 使われない | 許可なく使われない |
| 削除した会話の行方 | 削除後30日以内にシステムから削除。ただし法的・セキュリティ上の理由で長く残る場合あり | 保持ポリシーやホールドが優先。設定されていれば残り続ける | Vault管理者はさらに約30日間、検索・エクスポート・ホールドが可能 |
| 記録の保持期間の目安 | Compliance Logs Platformは30日(Enterprise・Edu) | 監査(標準)で180日。監査(プレミアム)なら保持ポリシーで最長1年、アドオンで最長10年まで延ばせる | 保持ルールとホールドの設定次第。ホールドをかけると無期限 |
| 本人以外の目に触れやすい経路 | 自分で作る共有リンク(ワークスペース内に共有される) | 参照した文書名やSharePointのURLが監査記録に残る | プロンプトと生成物がWorkspaceのコンテンツと一緒に保存される |
※2026年8月30日時点の各社公式ヘルプの情報です。管理者側の設定によって実際の見え方は変わります。
表を眺めて気づくのは、「管理画面に一覧ボタンがない」ことと「中身を取り出せない」ことが、まったく別物だという点です。ここを取り違えると判断を誤ります。次の3つの節で、1社ずつ根拠を確かめていきましょう。
ChatGPT Business:既定では開けない。ただし但し書きがある
まずChatGPT Businessです。公式のFAQに、ずばりそのものの項目があります。
「デフォルトでは、管理者と所有者がメンバーの非公開チャットをすべて閲覧することはできません」。ChatGPT Business一般FAQの一節です。
読み替えると、こうなります。管理画面を開いても、部下の会話一覧がずらりと並ぶ画面は用意されていない。共有するかどうかは各メンバーが選ぶ、という設計です。
利用状況の分析についても、公式は線を引いています。使用量やクレジット残高といった運用指標は見えるけれど、それは「チャット履歴へのアクセスとは別個のもの」だという説明です。
安心しきる前に読むべき、もう1枚のページ
ところが、同じヘルプセンターには別のページがあります。会社が管理するアカウントを渡された人に向けた「管理対象ChatGPTアカウントのデータアクセス」という案内です。
ここには、管理者がアクセス・エクスポート・監査・保持・削除を行える旨が書かれています。その対象として挙がっているのが、次のものです。
- ChatGPTに送信するコンテンツ(プロンプト、アップロードしたファイル、生成した出力)
- 会話履歴および共有ワークスペースの内容
- 利用状況とアクティビティのメタデータ(サインイン、デバイスやセッションの情報、機能の利用状況)
ただし無条件ではありません。「組織の設定で有効になっており、適用法で認められている場合」という条件が付いています。権利としては存在し、発動するかは会社の設定次第、という書き方です。
矛盾しているように読めますが、そうではありません。日々のUIには一覧ボタンがない。けれど管理の枠組みとしての権限は書かれている。この二段構えが、ChatGPT Businessの実像です。
会話を丸ごと取り出す仕組みは、どのプランにあるのか
では、会話の中身をまとめて外部ツールへ流し込む仕組みはどうでしょうか。OpenAIはCompliance Platformという名前でそれを提供しています。
公式ヘルプいわく、これが使えるのはChatGPT EnterpriseとEduのワークスペースです。しかも会話メッセージを読む権限を与えられるのはワークスペース所有者だけ、と役割まで限定されています。
連携先として並んでいるのは、Microsoft PurviewやZscalerといった監査・情報漏えい対策の製品群です。導入されていれば、会話は会社のセキュリティ基盤の中に流れていくことになります。
逆にBusinessプランでは、退出前のデータエクスポート自体が用意されていません。自分の会話を持ち出す手段もない、という点は覚えておいてよいと思います。
なお、いま個人アカウントで使っている人も無関係ではありません。会社がドメインを主張・検証すると、あとから管理対象になる可能性がある旨が同じページに書かれています。個人ワークスペースを会社側へ統合するかどうかで迷っている方は、ChatGPT個人ワークスペース統合は取り消せない|判断の手順もあわせてどうぞ。
Microsoft 365 Copilot:プロンプトはあなたのメールボックスに入る
3社のなかで、いちばん設計思想がはっきりしているのがMicrosoftです。ひとことで言えば、Copilotとのやりとりを社内の他の記録と同じ扱いにする方針です。
Microsoft Learnの記述は明快です。AIアプリに対するユーザーのプロンプトと応答はユーザーのメールボックスに格納される、と書かれています。
これは技術的な置き場所の話にとどまりません。メールボックスに入るということは、メールと同じ調査手段が使えるということです。

電子情報開示(eDiscovery)でできること
電子情報開示は、訴訟や社内調査のときに証拠となる電子データを集めるための仕組みです。Microsoftの説明では、ケースを作り、検索の対象としてユーザーのメールボックスを選ぶと、Copilotとのやりとりを取り出せます。
検索条件に「Copilotアクティビティ」を指定する手順まで、公式ドキュメントに具体的に載っています。結果はレビューセットに追加して、そこから中身を確認しエクスポートできる、という流れです。
つまりCopilotの場合、「管理者が見られるか」ではなく「調査になったときに取り出せるか」で考えるほうが実態に近いわけです。
監査ログに残るのは中身ではなく、周辺の情報
いっぽう監査ログのほうは、少し様子が違います。ここには驚くほど細かい「周辺情報」が記録されます。
- Copilotが応答を作るためにアクセスしたファイルやメールの名前
- そのファイルのSharePointサイトのURL、ファイルの種類
- そのファイルに付いていた秘密度ラベル
- どのアプリで使ったか(Word・Excel・Outlook・Teamsなど)
- 使われたAIモデルの提供元とモデル名
ただしプロンプトそのものについては、監査ログの項目はメッセージの識別子と「これはプロンプトか応答か」を示す印にとどまります。文章の本文がそのまま監査ログに並ぶわけではありません。
とはいえ本文が見られないわけでもない、というのがややこしいところです。Purviewのアクティビティエクスプローラーでは、特定のロール(コンテンツエクスプローラーのContent Viewer)に属していればプロンプトと応答を表示できる、と説明されています。
整理するとこうです。全員が見られるわけではなく、権限を割り当てられた人が見られる。会社の情報システム部門がその権限を誰に付けているかは、社外からは分かりません。
Gemini for Workspace:監査ログには中身が残らない
Googleは、記録の置き場所を2つに分けています。この分け方を知っておくと、話がすっきりします。
ひとつは管理コンソールの「監査と調査」ツール。もうひとつがGoogle Vaultです。同じ「管理者が見る道具」でも、見えるものがまったく違います。
| 道具 | 管理者に見えるもの | 見えないもの |
|---|---|---|
| 監査と調査ツール(Gemini for Workspaceのログイベント) | 誰が・いつ・どのアプリで使ったか。使った機能の種類(会話・生成・要約など) | プロンプトの本文、生成された文章の中身 |
| Google Vault | ユーザーが入力したプロンプトと、Geminiアプリが生成した応答。保持・ホールド・検索・エクスポートに対応 | プロンプトに添付したメディアファイルやGems、Geminiが生成したメディアファイル |
ここが3社のなかでいちばん誤解されやすいところではないでしょうか。「監査ログに残る」と聞くと中身まで読まれる気がしますが、Geminiの監査ログに並ぶのは使ったという事実だけです。
そのかわり、Vaultという別の道具が中身を扱います。Vaultは訴訟対応や記録保持のための仕組みで、GmailやドライブやChatと同じように、Geminiアプリのメッセージも保持・検索・エクスポートの対象です。
「Geminiアプリ」と「Gemini for Workspace」は別の箱
もうひとつ、細かいけれど効いてくる区別があります。VaultがGeminiのデータとして扱うのは、Geminiアプリ(gemini.google.comのチャット画面)のメッセージです。
Gemini for Google Workspaceのデータ、つまりGmailの返信下書きやドキュメントの要約といった機能のやりとりは、Vaultの「Geminiアプリ」の枠には入りません。
ではどこへ行くのか。GoogleのFAQは「あらゆるプロンプトや生成物がWorkspaceのコンテンツと一緒に保存されます」と説明しています。要するに、その機能を使ったGmailやドキュメント側のデータとして扱われるということです。
プライバシー面では、Googleははっきり書いています。「お客様のコンテンツが人間によってレビューされることも、許可なくお客様のドメイン外で生成AIモデルのトレーニングに使用されることもありません」。学習利用と外部レビューについては、3社のなかでもとくに明確です。
なぜ3社で答えが食い違って見えるのか?
ここまで読んで、こう思った方もいるかもしれません。同じ「会社のAI」なのに、どうしてこんなに答えが割れるのか。
理由は、3社が答えている質問が違うからです。
- OpenAIは「日常のUIで他人の会話が見えるか」に答えている。答えは「見えない」。管理の権限は別ページで説明
- Microsoftは「コンプライアンス部門が調査できるか」に答えている。答えは「できる」。既存の調査基盤に載せる設計
- Googleは「監視と記録保持を分けているか」に答えている。監査ログは中身なし、Vaultは中身あり
だから、ネットで見つけた「管理者には見えないらしい」という一文だけを持ち帰るのは危ういわけです。その一文が、3つのうちどの質問への答えなのか分からないからです。
実務的な結論はひとつです。どのサービスでも、権限を持つ人が本気で取りに行けば取り出せる可能性がある。そう前提を置いたほうが、あとで慌てずに済みます。
見られるかより先に効いてくる「保持期間」
ここまでは「見えるか」の話でした。でも実際に効いてくるのは、いつまで残るかのほうかもしれません。
いま見られていなくても、記録が残っていれば半年後に見られる可能性があります。逆に短期間で消えるなら、心配の賞味期限も短いわけです。
| サービス | 期間 | 何の期間か |
|---|---|---|
| ChatGPT | 30日以内 | チャットを削除してからシステムから消えるまで(法的・セキュリティ上の例外あり) |
| ChatGPT Enterprise・Edu | 30日 | Compliance Logs Platformがログを保持する期間。長く残したい会社は自前でダウンロードする運用 |
| Microsoft 365 | 180日 | 監査(標準)の既定の保持期間。過去6か月分を検索できる |
| Microsoft 365 | 1年 | 監査(プレミアム)でのExchange・SharePoint等の既定保持。アドオンで最長10年 |
| Google Workspace | 約30日+α | 保持ルールの期間が切れた後も、Vault管理者が検索・エクスポートできる猶予。ホールドをかけると無期限 |
※2026年8月30日時点の公式ヘルプの情報です。会社が設定した保持ポリシーによって、期間はこれより長くなります。
Microsoftの180日を、生活の単位に置き換えてみましょう。年に2回しか記録が入れ替わらない計算です。4月の異動シーズンに打ち込んだ一文は、10月の期首の調査でもまだ検索範囲に入っています。

さらに注意したいのが「ホールド」という仕組みです。訴訟や調査に備えてデータを凍結する機能で、これがかかると保持期間の設定を飛び越えて残り続けます。
GoogleのVaultでは、ホールドは保持ルールより優先されると説明されています。Microsoftも同じ考え方で、いちばん長い期間が適用される仕組みです。
会社のパソコンとネットワークは、また別の話
第2層の話にも触れておきます。ここを混ぜて考えると、いつまでも結論が出ないからです。
会社から貸与されたパソコンには、AIの契約とは無関係に動く仕組みが入っていることがあります。Microsoft Learnの解説ページには、AIの利用に絡めて具体的な例が出てきます。
- ブラウザ経由で外部の生成AIサイトに機密情報を貼り付けようとしたとき、警告を出したり止めたりする設定ができる
- 例として、クレジットカード番号をChatGPTに貼り付けないようにする設定が挙げられている
- 秘密度ラベルの付いたファイルのアップロードを、ラベルに応じて止める設定もある
つまり「個人アカウントで使えば安全」とは限りません。端末側で見張る仕組みは、どのAIを使うかと関係なく働きます。
そもそも会社のパソコンでAIサイトが開けない、という方もいるでしょう。原因の切り分けと申請の進め方は会社のパソコンでChatGPTが使えない|原因4分類と申請文にまとめています。
ステップで確認する:自社がどれに当たるか
ここからは手を動かす番です。自分の環境がどのパターンかを、5分ほどで絞り込めます。
画面の隅にあるアカウント表示を開き、会社のドメインのアドレスか、個人のアドレスかを確かめます。会社のドメインなら、その環境は会社の管理下にあると考えるのが妥当です。
ChatGPTならワークスペース名と表示、Microsoftなら製品名にCopilotが付いているか、GoogleならGeminiがGmailやドキュメントの中にいるか。名前が分かれば、この記事のどの列を読めばよいかが決まります。
ChatGPTなら設定のデータ管理から共有リンクの一覧を開けます。過去に作ったまま忘れているリンクがあれば、この機会に解除しておきましょう。管理者権限より先に効く、いちばん現実的なリスクです。
社内ポータルで「AI」「生成AI」「利用規程」あたりを検索します。監視の有無や保持期間について会社が何を宣言しているかは、公式ヘルプではなくこちらに書かれています。
ここまでで埋まらなかった空欄だけを質問にします。聞き方の文例は次の次の節に置きました。
入力してよいもの・避けたほうがよいもの
お待たせしました。ここが実際にいちばん役に立つ部分だと思います。
判断の基準はシンプルにしましょう。「その文章が、上司と情報システム部門の両方に読まれても困らないか」。この一問だけで、たいていの迷いは片付きます。
| 区分 | 具体例 | 理由 |
|---|---|---|
| 会社のAIに入れてよい | 研修資料の要約、経費精算の手順の言い換え、社内向けお知らせの下書き、備品購入ルールの整理、議事メモの体裁直し | 業務そのもの。記録が残っても困らない |
| 入れる前にひと呼吸 | 取引先や個人の名前が入った文章、まだ社内で共有されていない検討中の資料 | 参照したファイル名やURLが監査記録に残る場合がある |
| 会社のAIには入れない | 転職や退職の相談、体調や通院の話、家庭やお金の悩み、他部署の人への不満、社外の友人とのやりとり | 業務記録として保存・検索の対象になり得る。私物の端末と個人アカウントで扱う |

もうひとつ、意外と見落とされる線引きがあります。一時チャットや履歴オフは、会社の記録を消す機能ではないという点です。
ChatGPTの一時チャットは、手動で消さなくても30日以内にシステムから自動的に削除される仕組みです。ただしこれは自分のアカウントの話であり、会社側の監査ログや保持ポリシーの話とは別に動きます。
ブラウザを操作するタイプのAI機能を会社のパソコンで使う場合は、もうひとつ論点が増えます。判断材料はClaude in Chromeは危険?会社のパソコンで使う前ににまとめています。
社内の誰に、何を聞けばいいか
公式ヘルプで分かるのは「できる仕組みがあるか」までです。実際に有効になっているかは、社内にしか答えがありません。
とはいえ「私の履歴、見てますか」と聞くのは気が重いですよね。角が立たない聞き方に組み替えてみましょう。
- 「業務で使う際の線引きを確認したいのですが、入力内容の保存期間について社内の決まりはありますか」
- 「監査ログやログの保持について、どの範囲を取得している設定になっているか教えていただけますか」
- 「入力してよい情報の区分(社外秘の扱いなど)を示した資料はありますか」
- 「私物の端末や個人アカウントで業務外の用途に使うことは、規程上どう整理されていますか」
聞き方のコツは、自分の心配ではなく「業務での正しい使い方を知りたい」という立て付けにすることです。担当部署としても答えやすくなります。
返ってきた答えは、この記事の表と突き合わせてみてください。公式仕様と社内設定の両方が揃ってはじめて、自分の環境の答えが出ます。
会社のAIの閲覧範囲でよくある質問
- 会話を削除すれば、管理者からも見えなくなりますか?
-
そうとは限りません。ChatGPTでは削除から30日以内にシステムから消える仕組みですが、法的・セキュリティ上の理由で長く保持される場合があると公式に書かれています。GoogleのVaultでは、ユーザーの画面から消えた後も管理者が約30日間は検索・エクスポートでき、ホールドがかかっていれば無期限です。Microsoftも保持ポリシーが優先されます。
- 上司が私のChatGPTの会話を勝手に読むことはできますか?
-
ChatGPT Businessでは、既定で管理者と所有者がメンバーの非公開チャットをすべて閲覧することはできない、と公式FAQに書かれています。ただし管理者は組織の設定と法令の範囲でデータへのアクセス・エクスポート・監査ができる旨が、管理対象アカウント向けの案内に記載されています。上司個人が思いつきで読める設計ではありませんが、権限のある担当者が手続きを踏んで取り出す道は残っています。
- 入力した内容がAIの学習に使われて、他社に漏れることはありますか?
-
3社とも、法人向けプランでは学習に使わないと明記しています。OpenAIはBusinessのデータを既定で学習から除外すると説明し、Googleは許可なくドメイン外でのモデル訓練に使うことはないとしています。学習利用と、社内の管理者に見えるかどうかは別の論点として切り分けて考えてください。
- 個人アカウントで使えば、会社には分かりませんか?
-
AIサービス側の管理者からは見えません。ただし会社のパソコンやネットワークを通っていれば、端末側の仕組みで記録される可能性があります。Microsoftの資料には、外部の生成AIサイトへの貼り付けを警告・ブロックする設定の説明があります。加えてOpenAIのヘルプには、会社がドメインを主張・検証すると、いま個人で使っているアカウントが後から管理対象になる可能性がある旨が書かれています。
- Copilotに聞いた内容は、Outlookのメールとして誰かに見えてしまうのですか?
-
受信トレイに表示されて同僚の目に触れる、という意味ではありません。プロンプトと応答がユーザーのメールボックスという領域に格納される、という技術的な保存先の話です。実務上の意味は、メールと同じ調査手段(電子情報開示)の対象になるということです。
- 会社の会話履歴を自分でダウンロードして残せますか?
-
ChatGPT Businessのワークスペースでは、データのエクスポートは利用できないと公式に説明されています。ワークスペースを退出すると、再度招待されない限りそのデータにアクセスできなくなります。残しておきたい内容があるなら、手元にコピーしておく運用が現実的です。
まとめ:見えないことに賭けない
長い記事になりました。持ち帰っていただきたいのは、次の3点です。
- 「管理画面に一覧ボタンがない」は「取り出せない」ではありません。ChatGPT Businessは既定で非公開チャットを一覧できませんが、管理者の権限そのものは公式に書かれています
- Microsoft 365 Copilotは、調査で取り出せる前提の設計です。プロンプトと応答はユーザーのメールボックスに保存され、電子情報開示の対象になります
- Geminiは監査ログとVaultで役割が分かれています。監査ログには中身が残らず、中身を扱うのはVaultの側です
そして、いちばん大事なことを最後に。「見られないはず」に賭けるのをやめると、この悩みはほぼ消えます。
会社のAIは業務のために使い、個人的な相談は自分の端末と個人アカウントに寄せる。線を引いてしまえば、履歴を消すかどうかで悩む時間そのものがなくなります。
まずは今日、共有リンクの一覧を開いて掃除するところから始めてみてください。5分で終わって、いちばん効きます。
- そもそもAIサイトが開けない方は:会社のパソコンでChatGPTが使えない|原因4分類と申請文。ブロックの原因を切り分けて、申請の文面まで用意しました
- 会社のワークスペースに招待された方は:ChatGPT個人ワークスペース統合は取り消せない|判断の手順。押す前に退避しておくものを整理しています
- ブラウザ操作型のAIが気になる方は:Claude in Chromeは危険?会社のパソコンで使う前に。会社の端末で使う前の判断材料をまとめました
- 外部から届いた資料をAIに読ませる方は:PDFのAI要約は危険?隠し指示を3分で確認。仕込まれた指示を見つける手順です
- 自分用のAIを選び直したい方は:【2026年】AIツールおすすめ比較|用途別に選ぶ。用途別の選び方をまとめています
※本記事の仕様・条件は、2026年8月30日に OpenAI公式ヘルプ(ChatGPT Business一般FAQ)、同(データ共有とプライバシーの管理)、同(管理対象ChatGPTアカウントのデータアクセス)、同(チャットおよびファイルの保持ポリシー)、同(Compliance Platform)、Microsoft Learn(PurviewによるMicrosoft 365 Copilotの管理)、同(CopilotおよびAIアプリケーションの監査ログ)、同(Purview監査ソリューション)、Google Workspaceヘルプ(生成AIプライバシーハブ)、同(Vaultの対応サービスとデータタイプ)、同(Vaultの保持の仕組み)、同(Gemini for Workspaceのログイベント)で確認した情報です。この記事で「公式に書かれていない」と述べている範囲も、この確認日とこれらのページに限られます。仕様や画面の名称は変わることがありますので、判断の前に当日の公式表示をご確認ください。
